※注意
この台本は日奈田あんこ先生の「Living Phantom」をもとにした二次創作です.
駒込による捏造,都合の良い解釈多々ありますのでそれでも良い方のみお進みください.
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ゲンさんとクシナさんのサシ呑みにて
クシナ 「……それで、ゲンさんはそのこと、ちゃんとミライちゃんに言ったんですか?」
ゲン 「お前よお、んなこと今更言えるわけねぇだろ。こんな事件起こっちまって、あいつ……ミライに「実は俺、お前の父親なんだ」ってなぁ……このまま黙っとくっつーのが得策だろ」
クシナ 「ゲンさんはそれでいいんですか?こんな席だから言っちゃいますけど、いつまでもそんなちっちゃい頃のミライちゃん待ち受けにして、寂しかったり……過去に捕らわれてるみたいでゲンさんらしくないですよ」
ゲン 「寂しくみえるか、そうか……クシナよお、人のことそうやって詮索するのはお前の悪い癖だぜ?俺は、俺が助けられなかったミライのおふくろさん、つまり俺の嫁さん、の分までミライを支えるって決めたわけよ。畜生、俺も酒に飲まれちまったか……すまねえなぁクシナ、独り言だ。俺はなぁ、アイツが襲われたとき地方に出張してたんだ。運がいいのか悪いのか、そこはアイツと俺が出会った土地でな?その頃はアイツ、まだ訛りがあってさ。1週間の出張だったんだ、アイツ相当仕事もできるやつで腕っぷしもそれなり。そこで俺がこっちにスカウトした、ってわけよ。めきめき成果をあげて、訛りが消える頃には秘宝の護衛担当に就いてた」
クシナ 「ゲンさん、相当惚れてたんですね。それに、奥さんのほうも……確か、四国でしたよね?遠いところからこんな東京のど真ん中に来るなんて、相当決心しないといけませんから」
ゲン 「へへ、そいつはどうかな。俺なんかに惚れるやつなんか……まあ、そんときはとにかく嬉しかったよ。だけどさ、考えないようにしても、後悔するんだよ……どうにもならねえってんのに」
クシナ 「奥さんを連れてきた自分が、結果的に奥さんを殺してしまった……ってことですか?」
ゲン 「……全く、お前はそうやって言いにくいことズバズバ言うよな。そんなんだからその歳になっても独り身なんだよ……はは、俺もか」
クシナ 「ゲンさん……」
ゲン 「アイツ、大きな仕事が来たの!って喜んでたんだ。俺も、まぁ……危険なのはアイツのほうが良くわかってただろうし、全部わかった上で決めたんだろうし。良かったな、俺より偉くなっちまったな。なんて茶化してた。次の日の朝……夜みたいなもんだったけど。アイツ、「大丈夫だよ。じゃあね」って言ってベッドでうとうとしてた俺に笑って出てった。俺は、「おう。」って。最後の言葉なのにな?こんなことしか言えなかったんだ。俺はもう一回寝て、荷物まとめてアイツの故郷に出張。向こうに着いたときにはほぼ日の入りだったな、俺の携帯に電話がかかってきたんだ。アイツが襲撃されて、病院に運ばれてるってな……俺は仕事全部投げて飛行機に飛び乗ったよ。警察失格だよな、笑えねぇよな。……着いたころには、冷たくなってた。左手は血やら切り傷やらでずたぼろ。右手には俺の買った指輪とペンダントが握られてた」
クシナ 「それって、ミライちゃんの……」
ゲン 「そうだ。ミライが持ってるペンダントは、嫁さんのモノだったんだ。あいにく写真も血だらけになってたから、警察手帳のを入れたってわけ。」
クシナ 「指輪、というのは?」
ゲン 「ああ、俺がしてないからってことか?ほら、警察って取り締まりとか検査とかやたら多いだろ?だから指輪は不便でしょうって、代わりにジャケットをくれたんだ。ほら、これ少し小さいだろ?昔はちょうどだったのにな。俺も歳を取ったってことさ。指輪はな……何故か持ってた。プロポーズのときの指輪だよ。ほっそい指にちっこいダイヤが映えてさ……死ぬ覚悟はできてたんだろうな。ほら、これ見えるか?」
クシナ 「写真?なんですか……あっ」
ゲン 「頼んで作ってもらった。俺がいつもライター持ってないやつだと思ってるだろ?もったいなくて家でしか使えねぇよ。こんなん」
クシナ 「これ、二人が出会った」
ゲン 「埋め込んでもらった。こんな薄汚れた土地じゃなくて、アイツが育ったあの街で死なせてあげたかったなあって」
クシナ 「本当に愛していたんですね。奥さんのこと」
ゲン 「ああ。でも今は、ミライのことを同じように愛してくれる人がいて幸せだよ。レイジもさ、福井警視も。アイツもなかなかいい奴だよな……フエキの野郎も、どっからか狂っちまっただけで根は俺と同じだろうな」
クシナ 「ゲンさんとフエキさんが同じ……ですか?」
ゲン 「あの野郎の言うこともわからなくはねえよ。わかりたくねえけどな。俺も、死んじまったあと随分とアイツに会いてえな、話したり顔見ることもできねぇのかってずっと悩んでた。再会できる手段があったら、俺も犯罪に手を染めてたかもな。だって、会いてえんだよ。……けど、怪盗紅狐の女がミライだってわかったとき、俺は絶対にミライを守るって決心したんだ。まぁ、過去に縋ってないで未来を見ようぜ、ってことだな。俺とアイツで、そういう思いで付けた名前だから。ミライに嫁さんの記憶があったのは助かった。親戚を辿ってアイツがペンダントを受け取ってくれたから」
クシナ 「……ゲンさんって、しっかりお父さんしてるんですね。いつもはあんななのに」
ゲン 「うるせえ。嫁を殺した不甲斐ねえ父親だけどな、見届けてえんだよ、愛娘の成長を、さ……」
クシナ 「その、嫁を殺したっていうのは間違ってますけど。ゲンさん、今すごくいい顔してます」
ゲン 「お、そうか?……うし、辛気臭せえ話はここまでだ、今日は俺が出すから思いっきり……とはいかねえが、それなりに呑んでくれ」
クシナ 「ゲンさん、相手してくれます?」
ゲン 「うるせえ、ここまで聞いてもらって相手しねえってほうがどうかしてるぜ。おら、福井ジンも呼んでやるからアピールしとけ」
クシナ 「アピールって……私はゲンさんの隣でお仕事してればそれでいいんですけど」
ゲン 「なんか言ったか?お前なぁ、そろそろ嫁としての旬が……」
クシナ 「はいはい、わかりましたって!財布すっからかんにさせますからね、覚悟しておいてくださいよ?」
ゲン 「おうよ!」
おわり
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